【内山竣太選手 寄稿】フィンランドのサウナで起きた”血まみれ事件”。それでも誰も驚かない理由

【内山竣太選手 寄稿】フィンランドのサウナで起きた”血まみれ事件”。それでも誰も驚かない理由
本人提供

先日というより、数カ月前の夏が終わりかけていたある日、家から徒歩約10分のビーチにこじんまりと佇んでいる、夏限定無料公共サウナに行きました。

外国人は自分だけ。そんなローカルサウナ特有の雰囲気を楽しんでいた矢先、目を疑うようなアクシデントが起こりました。

今回はこのサウナで起こったフィンランドならでは?サウナでの酔っ払いが原因で血まみれになっていた男性と、そんなことが起こったにも関わらず、過度に驚いたり騒いだりしないフィンランド人たちのリアルな姿を皆さんにシェアします。

(今回の現場となったサウナは、SNSアカウントなどもちろんなく、基本的にローカル民のみ、フィンランド語のみが飛び交う純度100%のフィンランドサウナ。別のサウナへ妻とともに行った際に、フィンランド人同士がヘルシンキ市内に点在しているローカルサウナについて話していたのを妻が聞き、フィンランド語で調べた結果ようやく発見できたサウナ)


大前提、サウナの本場フィンランドにて、サウナの際にお酒を片手に談笑している光景はもはや日常茶飯事です。

基本的にシャイでおとなしいといわれているフィンランド人にとって、
サウナ+お酒=自分をさらけ出す大事な空間になっています。

しかし経験したことのある方ならわかるかもしれませんが、サウナ+お酒+水風呂などのクールダウンのサイクルは、通常時よりもお酒の酔いを促進させます。サウナによる脱水と血管拡張が、アルコールの吸収を早めるためだと言われています。

※個人差や慣れているかいないかの差はあれど、フィンランド人たちにとっても例外ではない

これらの大前提が存在しているうえで、起こった今回の出来事になります。


冒頭でもお伝えした通り、今回のサウナというのはヘルシンキ中心からは少し離れたところに位置し、基本的にローカルの人達しか訪れません。

ということは必然的に、雰囲気や慣習のようなものも、観光客たちの影響を受けることなく伝統的なものがいまだに残っています。

そして、時間や年齢層にもよるものですが、私の経験上、ローカル感が強ければ強いほどお酒を片手にサウナを楽しむ人の割合が多くなる気がします。

案の定そのサウナでも多くの人がお酒とサウナを同時に楽しんでいました。

私たちが訪れたのはその日のオープン時間とほぼ同時の昼頃で、すでにサウナには定員いっぱいの人がおり、今回の話の主人公である男性もすでにサウナを楽しんでいました。

男性のプロフィールはざっとこんな感じ

  • 年齢はおそらく60代くらい

  • 毎年のようにこのサウナを訪れてる

  • 多くの友人がいるようで常連ローカルの一人

  • お酒がかなり大好きな様子

  • 昨年も何かしらのアクシデントがあったそう

まぁこんな感じで初見からやや危なっかしさはありましたが、そんなのもフィンランドでは当たり前の光景なので特に気にも留めていませんでした。

しかし、時は突然訪れます。

休憩を終えた私たちがビーチからサウナへ戻ろうとしたときに、突然大勢の人たちがサウナから一斉に出てきました。

そして、その中の一人が顔面血まみれの姿でタオルで覆われながら出てきたのです。そうです。先ほど紹介したプロフィールの男性です。

恐らく、サウナから出てくる際に、酔っぱらっていたため足元がふらついたか滑って手すりかサウナストーブに頭か顔の一部を強打してしまったとのこと。

過去サウナでの流血事件など目の当たりにしたことがなかったので、驚いたのはもちろん、衛生面などを考えると今日の営業は中止などと考えていましたが、フィンランド人たちのここからのリカバリーの速さは異常でした。

そして、このアクシデントに対しての皆の反応あたかもこんなアクシデントですら日常茶飯事かというくらい手際よく掃除や対応をしていた姿あっという間にサウナの営業が再開したことが、男性のケガよりも私が驚いた一コマでした。

男性の様子は痛々しく流血さえしていたものの、言動や意識はしっかりしており、「去年のケガのほうがよっぽど酷かったわい。痛くもなんともないわい。」と言っていたそうで、去年も何かしらの大事件を起こしていたそう。

皆の反応も、私のようにびっくりしていた人もいたと思いますが、男性をいじる人、淡々とサウナの再開を待つ人、あきれた様子で笑っている人など、特に騒ぎ立てる人はいませんでした。

施設の従業員たちはホースの水で血まみれになった床や壁を淡々と流し、再開などに関する質問にも淡々と答えていました

まさに、当たり前の光景の一つとして皆反応し淡々と処理・後片付けをしていました。

もちろん、その後は皆何もなかったかのようにサウナに戻り、何気ない当たり前の光景が戻っていました。(さすがに例の男性は外のベンチにて休憩してました)

もし仮に日本で同じことが起こったとしたら、何かしらの施設・管理問題に発展することも大いにあり得ると思います。

しかし、フィンランドではこのような場面に限らず、多くの場面にて最低限のサービスのみを提供し、あとは個人で責任を負う・管理することが社会の共通認識としてより浸透している印象があります。そのため、今回の流血事件も多量に飲酒したのはあくまで自己判断で、多量の飲酒さえしなければ何も問題は起こらなかったはずなので、施設側として落ち度はなかったとされてるでしょう。
(その後の新聞記事やニュースには何一つ掲載がないため)

 

今回の件でサウナでの過度な飲酒は危ないと身をもって学んだことはもちろんですが、サウナ+お酒=フィンランドの公式がフィンランド文化に溶け込む際には欠かすことのできない要素だと再確認しました。

過度に騒がず、あっという間に日常が戻ったあの光景。
周囲に漂っていた落ち着きを思い出すたびに、「当たり前の基準は国によって全然違うんだな」と感じます。

 

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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