【内山竣太選手 寄稿】特別な理由など何もない——フィンランド人のしあわせの形

【内山竣太選手 寄稿】特別な理由など何もない——フィンランド人のしあわせの形 寄稿
本人提供

「幸せとは何ですか?」
「幸せと感じる瞬間はどんな時ですか?」

という質問をフィンランド人にぶつけてみると

何もないこと・天気が良いこと・当たり前の日常があること、などという何も特別ではない答えが返ってくるでしょう。

日本人にとっての幸せと、まるっきり違う定義を持っていることに気が付くと思います。

しかしこの当たり前の日常が当たり前にあるということが彼らの幸せの秘密なのです。今回は実体験を交えながら、この幸せの秘密について皆さんにシェアします。

日本人が幸せを感じにくい理由

まず初めに、フィンランド人の幸せについて語る前に日本人が幸せを感じにくい理由について私なりの視点で少しだけ考えてみます。

国民性

まずは遺伝的な部分を理解することが大事です。

私を含め、多くの日本人たちは幸せだとされる他の国々の人たちに比べ、自己肯定感が低く物事を悲観的にとらえてしまう国民性だとされているそうです。

日本人の遺伝的物事の捉え方について詳しく読みたい方はこちら

上記の記事にもあるように、心理学者により科学的に証明されています。

これにより、まずは同じ物事が起こったとしても、日本人と他国の人の間に捉え方の違いがあるということを頭に入れておく必要があります。

ワークライフバランスの欠如

聞いたことのある人も多いと思いますが、未だに日本は世界的にも長時間労働をする国としてのイメージを持たれています。

日本の労働時間が長い5つの理由|長時間労働と低い生産性の悪循環

それに伴い、休日を休息のみ、最低限のやるべきことしかできずに家族や友人、趣味に費やす時間が圧倒的に他国と比べると短いです。

リラックス効果のある自然に触れ合う機会が圧倒的に少ないのもワークライフバランスの欠如が要因だと考えます。

それでも少しずつ改善傾向にあるので、今後も順調に改善が行われることに期待します。

フィンランド人 幸せの理由

ここからは、フィンランド人たちの日常生活風景から、私が彼らに対して抱く幸せの理由についていくつかシェアさせていただきます。

世界幸福度ランキング世界一位とされるフィンランドですが、彼らは全くもって特別なことをしてるわけではありません。

ただただ各々が持ってる価値観や軸を大事にして生きている気がするのです。以下、実際にフィンランドで4年ほど暮らしてきて見えてきた具体例です。

幸せを感じる能力に長けている

フィンランド人は間違いなく日本人よりも「幸せを感じる能力」に長けています。

私たちには長い歴史もなければ文化もない。長い間、厳しい自然環境の中で木やイモを食べて生き延びてきた。そのため天気や何気ない日常の小さな一コマにも感謝や喜びを感じることができる。

と妻は私に教えてくれました。

日本のように、24時間開いてる飲食店はもちろん、娯楽施設もコンビニもありません。天気の悪い時期も長く、冬には南端のヘルシンキですら-20度の厳しい自然環境です。

このような環境での生活を余儀なくされてきたからこそ身についた能力なのです。

ヘルシンキの年間平均気温はこちら

自然と隣り合わせの生活

フィンランドはとにかく自然が豊かです。

私も妻とともにヘルシンキに住んでいるのですが、家の近くには当たり前のように森や川があり、緑や野生動物を身近に感じられます。

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家から徒歩15分ほどにあるビーチ
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家の近所で見かけた鹿
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うさぎやリスなどの野生動物も

OECD(経済協力開発機構)加盟国37カ国内におけるランキングによると、

日本は国土面積に対しての森林面積が約68.4%と世界三位、フィンランドは森林面積が73.7%と世界一位。一見するとさほど大きな差がないように感じます。その他の国も気になる方はこちら

しかし、湖の数を比較すると一目瞭然です。

日本の約3000個に対し、その数なんと約180000個以上と言われています。

人口が約550万人(ほぼ北海道と同等)なので、フィンランド国民約30人に1つの湖があることになります。森林面積世界一位、この湖の数により自然がどれほど身近にあるかわかっていただけたと思います。

夏には湖のほとりにあるサマーコテージへ行き、家族とともに散歩や釣り、自然と触れ合いながらのんびりするのがフィンランドスタイルです。

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妻の家族と訪れたサマーコテージ
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目の前の湖では釣りやカヤック、サップなどを
自由気ままに楽しみました

保証された安心感のある生活

フィンランドで暮らしていくには日本と比べ物にならないくらい高額な税金を納めなければなりません。

しかし、高い税金を納める代わりに、学費や医療費が基本的に無料なのは有名な話で、そのほかにも日常生活で必要とされる数多くの公的サービスを気軽に受けることが可能になっています。

そのため、自分の身に何か不測の事態が起きたとしても身銭を切ることなく安心して暮らしていけるのです。

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2023年に一度感染症により3泊の入院を余儀なくされましたが、最低限の入院費で済んだのも整備された税金システムによるものでした。

高い税金の使い道が目に見える形、身近な形で国民に還元されており、それらが国民の生活に安心と安定をもたらしている点が、実はフィンランドが世界で一番幸せといわれている理由なのかもしれません。

お客様は神様でも何でもない。

フィンランドでは「いらっしゃいませ」というような、お客さんを迎えるような言葉はありません。

その代わりに、「hey!」「moi!」などといった物凄い気さくな感じの雰囲気の挨拶が待っています。場所によっては入店時に全く反応されないことも珍しくなく、会計時ですら何も言われないこともあります。

日本が堅苦しすぎるとか、フィンランドの挨拶すらしない人が無礼だとか言いたいのではなく、良い意味で客と店員がフラットなことをお伝えしたいまでです。

このような現象はその他多くのシーンでも見られますが、全体的に日本よりもリラックスしながら働ける環境が多いのかなという印象があります。
(実際に小学校で教師をしてる妻ですが、生徒たちからは下の名前で呼ばれています。日本では考えられないことですがフィンランドでは当たり前のことだそうです)

もちろん、リラックスしすぎていたり、もう少し仕事に向き合ってほしいと思うようなシーンも見受けられるのでこれに関しては表裏一体ですが、私的には良い環境だと思うので紹介させていただきました。

まとめ

今回は日本人が幸せを感じにくい理由と、フィンランド人がなぜ幸せといわれているのかについて、専門的知識など一切ない一般人の視点から皆さんにシェアしました。

幸せとは人それぞれ違った定義や指標があり、データやランキング形式で表すものが最も難しいものの一つだと思います。

実際に、食事や娯楽、商業施設の充実度など多くの場面を切り取ってみても日本は負けず劣らずの素晴らしい国です。

ただ、世界的にも幸せの国として有名なフィンランドからわれわれ日本人が学ぶべきものが数多くあるのも事実です。

そのヒントと思われるもの、フィンランドでの日常生活に転がっている幸せを感じられるかもしれない手掛かりたちを今後とも皆さんにシェアしていきます。

ただの一般人である私のフィンランドでの日常が、考え方や物の捉え方を変えるきっかけの一つとして何か皆さんの人生のお役に立てば嬉しいです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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